月1回と週1回、富裕層はどっちを好むのか

前回は富裕層がサンヤツやサンムツ、あるいはベタ記事と呼ばれる特殊なメディア広告枠や編集記事を好む傾向があることを紹介した。(「広告は『小さい方がいい』のはなぜか」http://president.jp/articles/-/21539

今回はライフスタイルの話に変えて富裕層の時間軸の特徴を考えてみたい。

最初の例はゴルフだ。富裕層にゴルフ好きが多い。プレーそのものも楽しいのだろう、そこに疑問の余地はない。ある人は健康を考えて、また、ある人は接待でとそれぞれ理由はあるだろう。このゴルフという富裕層好みのスポーツで注目したいのは、「月例」という言葉だ。月に1回ゴルフ場のメンバーだけでスコアを競う大会で、言葉の通り月に1回、毎月実施されるのが通例だ。

実はこの月に1回、または月に数回という「付き合いレベル」は富裕層の付き合いの本質をついている。もしかしたら無駄な時間なのかもしれない、または、無駄に見える時間なのかもしれない。しかしながら、頻度として多くもなく少なくもなく、また間隔が短いわけでも間延びしているわけでもない。いってみれば「ご無沙汰感」がとても少ない間合いというのは、「無駄なように見えること=付き合い」を最終的には生きた時間にするための本質的な間合いなのではないか、と感じることがしばしばある。

一方、ロータリークラブの例を挙げるとわかりやすいかもしれない。日本のロータリークラブの入会者は今現在11万人強と言われている。私の感覚からいえば、その過半数は本格的な富裕層といって差し支えないだろう。ロータリークラブはどの国でも例外なく「例会」という週に1度の集会があり、主にメンバーと昼食をともにしながら世間話も含めコミュニケーションを図ることを目的としたものだ。

この例会は週に一度という高頻度なものであることから、ロータリークラブを脱会する富裕層も後を絶たないという。これが月に1度であれば、富裕層マーケティング上はロータリークラブのメンバーはもっと増えるというのが私の持論だ。つまり、月に1回(程度)ある種の規則性に基づいて手短に情報提供する手段というのは、感覚的にすぎるかもしれないが富裕層マーケティングの真骨頂である、という仮説を私は持っている。

もうひとつの例として挙げることができるのが、富裕層の地元への貢献だ。富裕層ビジネスに関わっていると、よく「地元の名士」という言葉に出くわす。実際にこの「地元の名士」と会って話をしてみると、町内会の会長や、寺社仏閣の行事への参加など、地域貢献に対する共通項が見て取れる。ここまではよくある話だが、私の感覚で言えば、「地元の名士」は長い間地域貢献を続けているからそう呼ばれる。つまり、長続きしていることにはなんらかの理由があるはずで、その理由が富裕層独特の時間軸と情報受容軸のバランスなのではないかと考えている。

町内会の会合なども月1回が多いのではないか。週1だと多すぎるが、月1だとごく自然に受け入れることができる、という時間軸は富裕層ビジネスにおいては見逃すことは少なくとも現時点ではできない。