「仕事にやる気が出ない」「もっと頑張らなくては」──。こんな悩みを抱えている人は多いのでは。今大ブームのアドラー心理学は、無理に頑張らなくても、自分のやる気を引き出せる方法を教えている。やる気をなくしてしまった7つの症状別に「やる気が湧く行動習慣」を紹介していく。
(3)理想追求型
履物を揃えるだけで商売が繁盛
理想追求型の長所は、高いビジョンと志を持ち、自分の潜在能力を信じている点。ただ、少しばかり遠い理想を描きがちで、足元の現実を疎かにしている。理想を追い求めるあまり、地に足がついていない印象を周囲に与えていることもある。
こうしたタイプへのアドバイスとして、行動イノベーションの専門家である大平信孝氏は「まず、履物を揃えよう」という。どういう意味か。
かつて整骨院の経営者が相談に来た。「こういう整骨院にしたい」というビジョンは描けているのだが、それだけに現実の経営状況に納得がいかず、理想と現実とのギャップに士気が下がりがちで困っていた。そこで一気に理想に近づこうと考えるのではなく、まず患者さん用のスリッパをきれいに揃えるよう勧めた。
院内が一カ所でもピシッと整うと、その他の乱れも目につくようになる。待ち時間用の雑誌が乱雑に置かれていたり、ゴミ箱にはゴミが一杯になっていたりしたが、それらもスタッフが整理整頓。すると業務のスケジュール管理まで徹底できるようになり、次第に客足も伸び、大いに商売繁盛したという。どんな理想を掲げたとしても、まずは足元の行動から見直すのがいいという好事例だ。
高い理想を掲げるあまり、最初の一歩が踏み出せなくなる状態を、アドラー心理学を使った研修やカウンセリングで定評のある岩井俊憲氏は「青い鳥症候群」「ユートピアシンドローム」と呼び、早くこの状態から脱すべきだと警鐘を鳴らす。この症状の困った点は、ただ単に理想が叶わないことではない。高すぎる目標を掲げると、現在の自分を否定することになり、やる気など出しようがない状態に陥ってしまうのだ。
理想に向けた道筋は一歩一歩でしかない。理想が高すぎると気づいたら、あえて少し下げてみよう。あるいは、究極のゴールの手前に、実現可能な当面の達成目標を掲げる。そして、理想に向かって一段ずつ着実に上っていくことだ。