▼慶應義塾大学大学院特任准教授 ジョン・キムからのアドバイス

5年先の目標を決めるのはムダです。時代は激しく変化します。自分は5年先の時代を予測する能力を持っているのか。そう問うたとき、ほとんどの人は自分の無力さに気づくはずです。

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「予定を入れない時間」もスケジューリング(※)

年先の目標がムダだと考える理由はもう1つあります。それは、時代の変化以上に自分が大きく変化するからです。人は同じ自分をずっと生きるのではなく、瞬間ごとに生まれ変わります。明日の自分は今日の自分ではありません。にもかかわらず、現時点の根拠に乏しい推測で、未来の自分を縛るのはもったいない。5年先のことは未来の自分に決めさせればいい。そのときの自分はいまより飛躍的に成長しているはずだからです。いまの自分の判断能力を過大評価してはいけませんが、未来の自分の判断能力を過小評価してもいけないのです。

そうはいえ、計画は必要です。大切なのは、目標を設定する際に抽象度を持たせること。抽象度が高ければ、そのときどきに合わせて目標を修正していくこともできる。意思が弱いから目標を修正するのだと考える人もいますが、私はそう思いません。自分を取り巻く状況は日々変わるし、自分も瞬間ごとに変わるのですから、目標の修正はごく自然なことです。最初は自分を液体のようにしてすべてを包み込み、いざとなれば固体や気体になって進んでいくイメージです。

短期的には、具体性のある固有名詞の目標を設定してもいいと思います。ただその際には、富士山よりエベレストを目指すことです。目標が高かろうが低かろうが、それを100%達成することは難しく、たいていは目標値の7、8割のところに落ち着きます。だからこそ限りなく高い目標を立てて、自分に強い負荷をかける必要があるのです。