「仕事にやる気が出ない」「もっと頑張らなくては」──。こんな悩みを抱えている人は多いのでは。今大ブームのアドラー心理学は、無理に頑張らなくても、自分のやる気を引き出せる方法を教えている。やる気をなくしてしまった7つの症状別に「やる気が湧く行動習慣」を紹介していく。

(4)熟考スロー型

着手とデッドラインの2つの締め切りを設定

いつも考えすぎて仕事が進まない。決断が遅い――。よくいえば、こうした人は緻密な論理思考ができるタイプ。ただし、ますますスピードが重視されるビジネス環境にあっては、あまりに熟考していると不利な場面もある。いい点は生かしつつも、スピードアップを図ってみよう。

「地味ながらも効果抜群」として、メンタルコーチの平本あきお氏が教える手法は「思考の書き出し」。熟考型の人は、積極的に行動を起こそうとするポジティブな側面とブレーキを踏もうとするネガティブな考えが、頭の中でゴチャゴチャになっている。

それを整理するために、タイマーをセットして5分間、頭の中に流れている言葉をなるべく思考スピードのままノートに全部書き出してみよう。同じ言葉が流れたら、繰り返し書き出して構わない。ピピッとタイマーが鳴ったら、自分の思考を見てみよう。同じような内容が頭の中で堂々巡りしている様子がはっきり可視化されるはずだ。「結局、上司の承認が得られるかどうか心配しているだけなんだ」といったように、悩みの本質が浮き彫りになる。このように頭の中を書き出すことで、思考の渦に呑み込まれにくくなるのだ。

行動イノベーションの専門家である大平信孝氏が勧める作戦は「2つの締め切り」を設けること。通常は仕事のデッドラインだけを決めるが、「遅くともいつまでに着手するべきか」という着手の締め切りも実は重要だ。どんな仕事でも、やり始めてしまえば進むのに、手をつけるまでがいちばん億劫だという経験は誰しもあるはず。だからこそ、着手の締め切りを設けることに意味があるのだ。

そして、いざ着手しても初めからトップギアで走り始める必要はない。ほんの小さなことから手をつけるのがコツだ。アドラー心理学を使った研修やカウンセリングで定評のある岩井俊憲氏は「着眼大局、着手小局」を心がけよと諭す。熟考型の人は着眼大局、つまり大きなことばかり考えて、何から始めたらいいのか迷う。ただし、そのとき脳はサボっているわけではなく、何かしら試行錯誤している。それを目に見える形にするために、ほんの少しでいいから手足を動かすといいのだ。