先に動いてしまう反射神経を鍛える
「巧遅拙速」という言葉がある。出来がよくても時間がかかるより、多少出来が悪くても迅速なほうがいいという意味だが、これは仕事の進め方にも当てはまる。
アドラー派の心理カウンセラーでもある小倉広氏いわく、熟考型を自覚する人は、アドラー流にいえば、「決められない」のではなく「決めたくない」のだ。決めてしまうことによって、それがうまくいかなかったときに、自分の実力不足が露呈するのを恐れている。決断に必要な材料不足を挙げて、「○○があれば○○できるのに」と、常にできない言い訳を探して、結局何も決められず、始められないことが多いタイプだ。
こうしたクセがある人は、完璧なシナリオをつくってから動き始めるのではなく、まずは先に動いてしまう反射神経を鍛える必要がある。
そのために小倉氏が勧めるのは、できるかどうか考えずに「やります!」と宣言してしまうこと。動き出さないといけない状況に自分を追い込み「拙速」を体験するのだ。
デッドラインを決めるときにも、できるだけ余裕を持った前倒しの締め切りを宣言しよう。そして「前倒しなのだから100%の完成度にならなくても、できたところまでで提出してしまおう」(小倉氏)。「やる気」が出たら「行動」するのではなく、「行動」するから「やる気」が出る。逆の順番を実践せざるをえないよう自分を追い込んでいくのだ。
熟考型の人は頭でっかちで、少々理屈っぽいところがある。そうした人に大平氏は「もっと体を動かしてはどうか」と勧める。特にデスクワークが中心のビジネスパーソンであれば、終日パソコンに向かっていて肩や首がガチガチに凝っている人も多いはず。頭ばかりに血がいっている状態になりがちだ。体の隅々にも血液を流したほうがいい。
作業に行き詰まったなと感じたら、オフィス内を少し散歩してみよう。あえて違うフロアのトイレに行ったり、座席の遠い同僚にひと声かけにいったり、ひと気のない会議室などでストレッチをしてもいい。きっと新しいアイデアが浮かぶはずだ。
チームフロー代表取締役、メンタルコーチ。東京大学大学院修士課程修了。米国の心理学専門大学院(アドラー心理学)でカウンセリング心理学修士課程修了。
アンカリング・イノベーション代表取締役。目標実現の専門家。独自に開発した「行動イノベーション」により、日本大学馬術部を2度の全国優勝に導くなど活躍。
ヒューマン・ギルド代表取締役、中小企業診断士、上級教育カウンセラー、アドラー心理学カウンセリング指導者。カウンセリング、カウンセラー養成や公開講座を行う。
小倉広事務所代表取締役。組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。リクルート、ソースネクスト常務、コンサルティング会社代表取締役を経て現職。