経理マンが動いて「1人飲食」を発見!
私は『経理部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)を執筆するに際して、5年かけて経費チェックをしている多くの経理担当者に話を聞いてきた。仕事内容はひたすら毎日書類をめくり、金銭の支出とその内容が問題ないかを見続けている。皆さんがきちんと仕事に取り組む姿に感銘を受けることも多かった。決算発表などの華々しい場面とは無関係な担当者がほとんどだ。
また経理部自体が、社内でも控えめな存在と見られることが多い。営業部門や人事部門などに比べると、社内からの関心も低く、「なくてはならないが、普段は意識しないという意味で、もの言わない臓器の肝臓に似ている」とたとえる経理部長もいた。
経理部員としての個人も同じで、人事評価という観点から考えると、ミスをしないように、また問題が出ないように行動しがちになると指摘する経理の専門家もいる。周囲からも保守的だと思われている経理部員は多いようだ。
しかしそういう中でも、書類をわきに置いて現場まで足を運ぶ経理担当者がいたことが印象に残っている。
ある調査会社に奇妙な精算をする女性社員がいた。喫茶店での調査ヒアリングの際、飲み物のほかにケーキを1つ頼んでいる。経理担当者が「ケーキまで必要なのか?」と聞くと、「お客さん(ヒアリング相手)が要望した」と回答する。
彼女が提出したほかの書類にも、スイーツが入ったレシートがときどき混じっていた。会社が決めた単価である、1人500円以内という規定には収まっている。しかし、どうも合点がいかない。
それまでの彼女の書類を見直すと、喫茶店の手書き領収書は1000円近くのものが多い。領収書の「摘要」には、「2人分飲食」、「ヒアリングのため」などと書かれている。手書き領収書は明細がわからないので、こう書かれてあれば受け付けるしかない。