ルールを変えて経費の透明性を高める

その後、何カ月か彼女の提出するレシートや領収書を見ていて、「1人で飲食しているのでは」という疑念が浮かんだ。彼女の活動日報と提出された書類を突き合わせることも検討したが、それでは非常に手間がかかる。

そこで担当者は、領収書の住所を頼りに、休日にその喫茶店に出向いてみた。メニューを見ると、飲み物は一律400円、ケーキセットは850円。提出された領収書の金額は2枚とも850円。1人で飲食していたのは間違いない。飲み物2人分なら計800円のはずだ。

ほかのFC店のレシートを調べると、人数は2人になっているが、ひょっとすると友人と一緒のものも含まれているかもしれないと思えてきた。

経理担当者は、彼女の提出した書類にはあえて何も言わず、新たなルールを設定した。

まず手書き領収書は原則認めない。ヒアリングを行うのは、明細の入ったレシートをくれる店に限り、かつ認めるのはコーヒーか紅茶だけ。その他のジュースやケーキなどはすべて自己負担。やむをえず手書き領収書になる場合は事情書を提出させることにした。

彼女の問題を個別に解決するよりも、社内全体で経費の透明性を高めたほうがよいと判断した。社員にとって店舗選びが多少窮屈になってもやむをえないと考えたという。

これには後日談があって、「喫茶店でのコーヒーと紅茶以外は支出不可」としたが、ファミリーレストランのドリンクバーは認めることにした。車を使う社員から「駐車場があるファミレスがヒアリングに一番便利なんです。コーヒーと紅茶に限られると仕事に支障が出ます」という声を聞き入れたからだ。現場の状況に応じて柔軟にルールを変えていくことも大切なことである。