企業との相性がよく、活躍できる人材の条件
ヘッドハンターと聞くと、有名な会社と高額の収入を提示して、優秀な社員を引き抜くというイメージがあることでしょう。しかし当社では、初回の面談では企業名も告げず、待遇条件も伝えないケースが多いです。私は、このやり方こそ王道中の王道だと思っています。お互いに手探りですが、ゴリ押ししない、無理に聞かないという姿勢から安心感、信頼感が芽生えるものです。
面談は、およそ1時間。まず、推薦する業界の最新動向や、そこにおけるクライアント企業のポジションを説明します。次いで、事前に入手した候補者の経歴などを確認しながら、仕事観や将来の希望など語ってもらうのです。そして「ご縁があるかどうかは別にして、この件についての具体的な情報はいつでも差し上げることはできます。折を見て、また連絡します」と次回の面談に含みを持たせます。
2回目になると、より詳しい話をします。ここで具体的な企業名が出るのが普通です。それがもしゼネコンなら社名を明かし、2020年の「東京オリンピック」までは活況を呈するにしても、その後で大型投資が期待できるのはリニア新幹線。そこで、当該企業の海外での受注を含めた経営計画などを説明していきます。その遂行のための人材確保が今回のスカウトの目的となれば、候補者にも理解されやすいでしょう。いい人材を採ろうとすれば、どうしてもこうした手順は避けて通れません。
それなのに、私どもからの手紙を受け取った時点から、クライアントのことはそっちのけで自分の市場価値だけを気にし、会ってすぐ、名の知れた企業か否か、提示されている報酬はいくらかを知りたがるビジネスパーソンも少なからずいます。でも、こういう方は残念ながら、2度目の面談はありません。私どもの候補者リストからもはずすことになります。
なぜ、候補者が自分のことから聞きたがるのがいけないかといえば「公の精神」を持ってないと判断されるからにほかなりません。欧米と違い、日本でのヘッドハンティングの場合、年収が下がることもままあります。もちろん、人の価値観はそれぞれで、お金に重きを置く人もいれば、働きがいや働く環境を大切にしたい人もいます。私の経験からいえば、企業とのマッチングがうまくいき活躍できるのは、圧倒的に後者なのです。