なぜ日本の大学卒業後留学させるのがいいか

人事担当者の間で「日本と欧米、どちらの大学を出ているほうが活躍するか」という話題になったことがありました。私たちヘッドハンターの立場からすれば、クライアント企業にとってどちらを薦めるほうがより満足度の高いマッチングになるかということになります。当社の場合、依頼の多くは日本企業からですので、そこの経営風土やスタイルになじむのはどちらかという判断になります。

最近、大学受験生を子に持つ父兄と話をする機会がありました。たまたまだと思いますが男子校の名門御三家、開成、麻布、武蔵に通っている親御さんたちの意見は、一致していて「キャリアの最終ゴールを日本、組織人に置くのであれば、海外留学は日本の大学を卒業してからでも遅くなく、日本的な和の精神を身につけた上で個人主義の世界を知ってほしい」という父兄ご自身の経験を踏まえた内容でした。

そこで、帰国組の例として10年ほど前に持てはやされたMBA(経営学修士)ホルダーについて話したいと思います。あるクライアント企業の役員(大手製造業・人事担当)が「MBAは意図的発想が多く、創発的アイデアが乏しい、当社が求める独創性がない」と話していたことを思い出します。ビジネススクールで教わったロジックを唱えるだけで、思考法が画一的になってしまっていると。しかも、個人主義が身につくと和の組織体制の中で周囲から浮いてしまいかねません。

なぜ、そうなるのかというと、私は日米のマネジメントスタイルとの関係があると考えています。端的にいえば、トップダウン型と、経営学の大家、一橋大学名誉教授・野中先生が説かれたミドルアップダウン型の違いです。前者の場合、組織はあたかも情報処理マシーンのように機能します。トップ(マネジメント層)が基本的なコンセプトを創り、それをミドル層や実務層が実行するという分業制です。ラインを明確にし、責任範囲を明確に分けて、責任の所在をはっきりさせています。

一方、後者は組織を重層化させるのです。社内のチームやタスクフォースを率いるミドルマネージャーがダイナミックな役割を担いトップと第一線の社員を巻き込んで成果を上げていくというやり方といえます。つまり、課長クラスをマネジメントの中心、社内の情報の縦と横の流れが交差する位置に置くことで、より責任感とモラルを高くすることができるのです。