2016年は人口減少問題を感じさせる年だった?

ヘッドハンターにとって、昨年がどんな年だったのかというと、端的にいって日本の人口減少の問題を切実に感じる1年でした。そのことは、私どもに対する小売業界からの問い合わせが、減少したことが物語っています。当社の創業は2003年ですが、その当初人材紹介の多かった業界が2つあります。

一つは日本の基幹産業である製造業。もう一つは小売・サービス業です。08年に起きたリーマンショックまでは、この2業種で受注全体の7~8割ほどを占めていました。それが一昨年から今年にかけてみてみると、小売業界からの依頼が激減したのです。その背景として、消費の低迷(人口減少と高齢化社会へのシフト)や小売業界内での企業統合・再編、いわゆる持ち株会社方式での資本提携が進んだことがあげられます。

それにより採用戦略が変化したのでしょう。グループ内の人材交流が活発になり、新たに外部から採用をしなくても、それまで自社にいなかったタレントを発掘するということが出来るようになりました。そうなると、基本的に新卒をじっくり育てていくことになり、中途採用もごく一部に限られるため、私たちエージェントが出る幕はそれほど多くありません。

経営者が新たな経営課題に取り組むにあたっては、グループ内の幅広い人材やチームから精鋭を選抜するはずです。その半面で、人材がだぶついていることも事実です。そうなると、今後、リストラが進むかもしれません。そのような厳しい状況の中でも、小売業でいえば、ダイエーや西友の出身者の中で常に問題意識を持ちながら(創造的思考力)仕事に取り組んできた人たちが、同業他社でも活躍するケースを多く見てきました。このような方々は創造的思考力(イノベーション力)が鍛えられているので市場価値が高く、同業種に留まらず異業種にも転職し活躍しています。

小売業というのは成熟産業なので、経営の核となる人材を多く輩出しています。一橋大学の野中郁次郎名誉教授の言葉を借りると、マネジメントの現場にあって「ミドルアップダウン型」で仕事をしてきた人材は、経営者との相性が良ければリーダーとして能力発揮できる機会が多いと考えます。彼らに共通しているのは、思考する力(創造的思考力、イノベーション力)と責任感(リスクをとる覚悟)。そんな人材にスポットがあたったのが一昨年あたりまでだったといっていいでしょう。

会社のピラミッド型組織図をマネジメント層、ミドル層、実務層と3層に区分しますと、一昨年までは、マネジメントとミドルの両方にまたがる指揮者型人材(プロデューサー型=創造的思考力の持ち主)、すなわち部長、本部長クラスから取締役にスポットがあたっていました。ところが、昨年から今年にかけては、ミドルのど真ん中から一部の実務層、すなわち部課長から係長に寄ったところの引き合いが多い。つまり、オペレーション業務を担うスタッフ型かスペシャリスト型人材の案件が多いということです。