西室泰三氏とベーカー元駐日大使
「東芝のリスク? 西田が(任期4年で)辞めちゃうことじゃないですか」
ある外資系証券会社のアナリストは真顔でこういう。
1943年、三重県生まれ。68年早大第一政治経済学部卒。
70年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。73年東京芝浦電気(現・東芝)イラン現地法人入社。75年東京芝浦電気入社。84年東芝ヨーロッパ上級副社長、92年東芝アメリカ情報システム社社長、95年東芝パソコン事業部長、97年取締役、98年常務、2003年同取締役執行専務などを経て05年6月から現職。尾鷲高校時代の世界史教諭が言った「尾鷲湾はテムズ河に通じる」が今でも記憶に残る。
西田とは西田厚聰、東芝社長のことだ。西田は2005年6月社長に就任して以来、一見大胆に見られがちだが、実は用意周到に準備された経営を打ち出し、進むべき道を模索していた東芝に未来を示した。いわば、東芝はこうして生きる、と明確に宣言をしたのである。07年度決算で東芝の売り上げは7兆6681億円、営業利益2381億円で名実共に総合電機メーカーだが、西田の登場によって、東芝は大きく変わろうとしている。
西田の名を世に知らしめたのは、06年1月に発表されたウェスティングハウス(以下、WH)の買収劇だった。
「WHを買収する前の当社にすれば、想像もできなかった世界なんですよ」
と西田は述懐する。
国内産業として建設、補修、再処理工業のほんの一部を請け負っていただけの東芝の原子力の風景はWHの買収で一変した。国内産業だった東芝の原子力事業はグローバルマーケットで勝負する事業となった。世界には原子力産業という9兆円ものマーケットがある。
東芝原子力部門の部長クラスがまとめたレポートには世界規模で起きようとしている「原子力ルネッサンス」の現実が克明に記されていた。原子力発電所は世界30カ国で439基が稼働(08年1月現在)し、原子力発電所の新規導入を予定している国および地域は20カ国以上に上る。アジアだけでも、インドネシア、タイ、マレーシア、バングラデシュ、フィリピンが導入予定国である。
東芝が世界市場に打って出るためにWHは絶対に必要だったが、これほどの“出物”もなかった。世界最新鋭の加圧水型軽水炉(PWR)「AP1000」を持つWHのブランド力、信頼性を考えるならば、買収金額およそ6200億円は決して高い買い物ではなかったはずだ。
WH買収により、世界で主流のPWR方式を得たのが大きい
現に米国の原子力発電所計画は、WH買収前の11基から31基に増加し、今後20年間で全世界では、150基以上の計画が打ち出されているほど、原発の需要は高まりつつある。
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