ウラン資源獲得に賭けた「政官財」大ミッション

東芝のWH買収により、原子力プラントを建設できる企業群は4つとなった。

(1) 東芝―WH
(2) 三菱重工―仏アレバ
(3) 日立製作所―GE
(4) アトムプロム(ロシア)

WHの買収は西田の原子力戦略の中核を担うものではあったが、終わりを意味するものでもなかった。東芝の原子力ビジネスが世界をリードし、繁栄の〝金鉱脈.になるためにはまだ必要なピース(一片)がいくつかあった。

07年4月末。日本はゴールデンウイーク真っ最中のとき、西田は中央アジアの大国、カザフスタン(以下、カザフ)にいた。WHを傘下に収め、東芝が世界市場で戦う道具立ては揃い、最大のライバルである仏アレバを追撃する準備はできた。しかし、WHを買収後も“足りないもの”を手に入れるために西田は天山山脈の麓までやってきていた。

仏アレバの強みは、国策の企業というだけでなく、ウラン燃料の供給から使用済み核燃料の再処理まで一貫サービス、ターンキー方式を提供できる点にある。

ウラン燃料製造はつぎのような過程をたどる。

(1)採掘(ウラン生産) → (2)転換 → (3)濃縮 → (4)再転換 → (5)成型加工

東芝が仏アレバに対抗するためには採掘による天然ウラン確保をするだけでなく、ウラン濃縮、成型加工能力も必要だ。カザフのミッションは経済産業相、甘利明(当時)を筆頭に、電力会社、大手商社などの社長級が参加した官民一体となった大ミッションであった。

ウラン埋蔵量世界2位のカザフは、駐カザフ日本大使館に何度となくオファーを出していた。

「日本の原子力企業にウランを供給する用意がある」