英語も中国語も、もう学ぶ必要ナシ?
興味を惹くのは、結果として今後AIが急激な進化を遂げたら、社会と産業はどう変わるのか。本書が展望する近未来は少々ショッキングだ。数年のうちに人間の感情を認識してコミュニケートできるロボットが普及し、次いで農業を含め、身体を動かす労働がロボットに取って代わられる。10年後には機械翻訳が実用レベルに達し、そうなると翻訳という作業どころか外国語を学ぶ必要すらなくなる。15年後より先は、「大局的で難しい判断を求められる」経営者や事業責任者、「人間が対応したほうがいい」セラピスト、レストランの店員、営業マンといった仕事以外は、AIが担うようになるという。
バラ色の未来に心を躍らせる人、断固として阻止せねばと拳を握りしめる人(?)……受け止め方は人それぞれだろう。「AIは人を幸せにするのか」という議論がまずは必要な気もするが、そこに山があればなにはともあれ頂を目指すのが人の性というもの。さし当たってわれわれは、人の知力がいずれ機械に負けることを前提に行動を起こしたほうがいいのかもしれない。
いずれにしても、AIの今を知るには格好の書だ。時は来たとばかり熱を帯びる研究者の息づかいが伝わってくる。もっとも一方に、本書とは意見を異にする一団もいることを覚えておこう。ディープラーニングによっても、AIが人を超えうるのは必ずルール通りに事態が進む世界(将棋や囲碁のようなゲームなど)に限られる、何でもありの現実に対処するにはもっと次元の高いブレークスルーが必要、と彼らは考える。
どちらが正解か、答えが出る日は案外近い。