控えに回ることには耐えられなかった

僕はいつもチームか母国のためにプレーしている――。

英国サッカーの象徴であるプレミアリーグの名門クラブ・リヴァプール、そしてイングランド代表のキャプテンとして活躍したスティーヴン・ジェラードの誇り高き言葉である。この本は、リヴァプールの赤、そしてイングランドの白いユニフォームに身を包み、ピッチを駆け続けた1人の英雄の物語だ。

『スティーヴン・ジェラード自伝』スティーヴン・ジェラード著 小林玲子訳 東邦出版

回想は2014年4月27日、日曜日に行われた対チェルシー戦の敗戦からはじまる。この年、好調なリヴァプールはあと1試合勝てば、リーグ優勝がほぼ確実というところまで来ていた。ジェラードは果敢に勝ち点を狙いにいく。だが、まさかの展開が起きる。前半の終了直前、敵のパスをカットしようと動いたジェラードが痛恨のスリップ。これが相手方の決勝点につながり、優勝の栄冠は手から滑り落ちてしまう。

そして、このシーズン終了後にジェラードはリヴァプールを退団する。34歳になっていた彼は、トップリーグのレギュラーとしては節目に差し掛かっていた。とはいえ「プロの選手として、控えに回ることには耐えられなかった」という。8歳でリヴァプールの下部組織に入団し、18歳でデビュー、500試合を戦った。いくつものタイトルをチームにもたらした彼の地元のサポーターは惜しみない拍手を送った。