叩かれた図書館事業の真相とは?

【弘兼】開業資金はどうしましたか?

【増田】レコード、雑誌、書籍などの仕入れが2000万円、総投資額は6370万円。僕は銀行から不動産を担保に5600万円借りました。

【弘兼】当時の5600万円って相当な額ではないでしょうか。独立は怖くなかったんですか?

【増田】僕の計算では失敗した場合、在庫商品を売るなどすれば、実損2000万円ぐらい。不動産収入もあるので何とかなるだろうという見通しはありました。新規事業は全部失敗するというのが前提なんです。売り上げゼロとして、どれぐらい事業を継続できるのか、人件費と家賃と建築の減価償却というマイナス要因をすべて考える。

【弘兼】結果はどうでした?

【増田】最初からものすごく儲かりました。映画を借りて家で見ることができるというのはそれ以前にはありませんでしたから。

【弘兼】第1号店はなぜ枚方市に開いたのですか。アンテナショップならば、原宿など都心のど真ん中のほうがいいような気がするのですが。

【増田】最初から自分がやる会社は「企画会社」だというのが頭の中にありました。第1号店をあまり目立つところでやると真似されてしまう。話題になって大きな資本の企業が入ってきたら、お金がまったくないので、競争に勝てない。だから目立たない場所ではじめたんです。


1982年に増田社長が書いた「創業の意図」と題した文章。その内容は現在やっていることに通じる。

【弘兼】「企画会社」について、詳しく説明してもらえますか?

【増田】企画の本質とは世の中にないアイデアや発想を生み出して形にしていくこと。それで人々に幸せや豊かさを感じてもらう。企画とは顧客と市場を創造することです。

【弘兼】なるほど。だから二子玉川の「蔦屋家電」のような家電販売をはじめ、枚方にこの5月16日に開店した「枚方T-SITE」のような百貨店にまで手を広げているんですね。ネット時代にこれらリアル店舗の価値をどのようにお考えですか。

【増田】リアル店舗の機能は、シンプルに言うと「選べる」「持って帰る」という2つしかありません。その2つを最も売りにしていたのが百貨店です。でも、今はネットで膨大な品揃えの中から「選べる」時代になったので、百貨店の優位性が失われてしまった。これからは場所を貸して収入を得る以外に百貨店は生き延びられないかもしれない。その答えを探すために、僕らは企画屋だから百貨店に挑戦するんです。