【弘兼】CCCのおよそ4000人の社員には、何を伝えているんですか。

【増田】みんなには「3つのことしかしてはならない」と言っています。1つ目は企画会社として「プラットフォーム」をつくること。2つ目は、これを運営するとデータが集まってくるので、そのデータベースを使って仕事すること。いわゆるデータベースマーケティングです。3番目は中身。ライフスタイルのコンテンツをつくることです。

【弘兼】プラットフォームとは?

【増田】お客さんがそこに行けば、沢山の商品の中から選べるという場所のことです。スーパーマーケット、ファストフード、コンビニエンスストア、すべてプラットフォームです。ただ、プラットフォームをつくるだけでは駄目です。2番目のデータベースマーケティングはもちろん、3番目のライフスタイルのコンテンツが大切になってくる。

【弘兼】コンテンツというのは書店の場合は品揃え。ここ代官山 蔦屋書店の棚は面白いですね。

弘兼「代官山 蔦屋書店ではコーヒーを飲みながら本を読める。立ち読みされないようにカバーを掛けて陳列している街の本屋と対照的です」増田「立ち読み? 全然いいじゃないですか。人が集まってくることが大切です。売り上げはお客さんの数に比例します」

【増田】代官山 蔦屋書店では、1つのライフスタイルに絞って本を集めているんです。たとえば食の場合ですと、医食同源。食べながら健康になるというライフスタイルを提案しています。車のコーナーも同じ。ビンテージライフ、昔のいい車を大切にしましょうというライフスタイルに沿って本を選んでいます。

【弘兼】なるほど。クルマのコーナーを通り過ぎたとき、「おっ」と思う本が置いてあるなと感じていました。

【増田】なんだかわからないけど面白い本が並んでいるでしょ? そのなんだか面白い理由というのは「ライフスタイル提案」なんです。

【弘兼】広く浅くではなく、ある角度で深く掘っている。

【増田】検索はネットでグーグルを使えばできます。ただ、検索というのは、知っている範囲でしかできない。世の中というのは未知の領域が多い。ぶらっと店に遊びに来て、「あっ」と思う発見がある。それが僕らの役割だと言い続けています。