高校を出ていない分、異常なほどに本を読む
【弘兼】現代アートの作品が社内の至る所に飾ってあります。太めの輪郭線が特徴的ですね。
【熊谷】イギリスのジュリアン・オピーという作家の描いたものです。必要最小限の要素でインパクトを残す彼の作品は、膨大な情報を0と1の組みあわせで処理するインターネットに近い。本能的に惹かれ、収集していたものを展示しているんです。
【弘兼】熊谷さんがインターネットを知ったのはいつですか?
【熊谷】1993年頃でしょうか。日経流通新聞で存在を知り、そして秋葉原で初めてインターネットを実際に体験しました。そのときに「これが世界を変えていくんだろうな」と思って、身を投じる決心をしました。
【弘兼】インターネットを体験して将来の技術だと感じた人は多かったことでしょう。ただ、そこからビジネスに繋げるのはまた別の話ですよね。
【熊谷】僕は学校を出ていない分、自分自身で勉強しようと思って、財閥グループの歴史や起業家の書いた本を異常なほど読み、成功するビジネスの構造をずっと考えていたんです。
【弘兼】高校を中退されたのは、何か思うところがあったのですか。
【熊谷】僕は高校には首席で入って、入学式では新入生総代でスピーチをしました。ところが入学してからというもの、「自分はやればできる」と自惚れて勉強をしなくなってしまった。そこからどんどん成績が落ちていって、同学年の生徒600人中500番台になってしまい、先生にものすごくいじめられて……。
【弘兼】イヤになってしまった。
【熊谷】自分はここにいるべきではないと思ってしまったのでしょうね。