子供の頃にミュージカル『アニー』の主役を務め、東大法学部から検事の道へと進み、政界進出という華麗な経歴を持つ山尾氏。有名な女性議員には強烈な個性の持ち主が多いが、彼女は意外と常識人。人をかき分け前に出たがることもなく、いやらしい猟官運動もしない。検事時代、「社会に希望を持てない人が犯罪に走り、その犯罪が被害者の希望を奪う」現状を見て、その「ひずみ」を正そうと政治を志した。2009年に初当選し、12年落選。14年に返り咲いた。国会質問の切れ味は鋭い。度胸もある。「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログを国会で紹介して注目された。自民党の激しい野次にもめげない。保育士の給与アップを主張し、政府の待機児童ゼロ政策は実効性が低いと批判。一児の母はいまや、安倍晋三総理の天敵だ。

民進党政調会長 山尾志桜里(時事通信フォト=写真)

民進党にとっては救世主的な存在で、当選2回ながら政調会長に抜擢された。12年の政権転落後も懲りずに同じ顔ぶれが続く人事のなか、久しぶりのサプライズだった。しかし、目立てばすぐにスキャンダル探しをされるのが最近の永田町。山尾氏も政治資金などで不正疑惑が浮上し、いわゆる甘利問題などを抱える自民党との泥仕合に引きずり込まれた。

疑惑を晴らし、政策立案で力を発揮できるか。それとも「やはり経験不足」と政敵を喜ばせるか。これからが正念場だ。民進党も人材育成の真価が問われる。「将来は代表」という声も上がる人材を、使い捨てや嫉妬でつぶしてはいけない。時間をかけて育てる度量が必要になる。

 
民進党政調会長 山尾志桜里(やまお・しおり)
1974年生まれ。東大法学部卒。2002年司法試験合格、04年検察官任官。07年退官し、09年8月愛知7区から衆議院議員初当選。
(時事通信フォト=写真)
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