ダバオ市長時代に自警団を率いて、往年のバイオレンス刑事映画『ダーティハリー』の主人公のように、強硬な治安対策を実行。「大統領になれば、国民を不幸にする人間を皆殺しにする」と放言。米国など西側諸国から非難の声が上がると「大統領になったら断交する」と発言するなど、米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ張りの放言癖がある。しかし乱れきった治安を回復した辣腕に“改革者”としての期待も高く、5月の大統領選では圧倒的票差で選出された。

フィリピン次期大統領 ロドリゴ・ドゥテルテ(AFLO=写真)

暴言とは裏腹に法律家の家に生まれた知的エリート。自身も検察官として10年働いたあとにダバオ市長を7期務めた。母方の祖父が中国人で、大学時代の恩師がフィリピン共産党創始者で毛沢東主義派のホセ・マリア・シソンであるなど、かなりの親中派とみられる。中国の軍事拠点化が進み、米中対立の緊張が高まる南シナ海問題の行方は、彼の外交政策が鍵となる。

日米との共同歩調で中国と対抗していたアキノ政権とは違い、当選後の会見では「海底資源の共同開発を進めたい」と中国への対話路線を打ち出した。中国側は「両国は親戚同士だ」と歓迎するが、米国側は狼狽を隠せない。選挙後は、過去の暴言を撤回し米国の同盟国であることを改めて強調、「意外に現実路線では」との期待もある。しかし、外交経験皆無の新大統領が外交巧者の中国に取り込まれるリスクは高い。ドゥテルテ氏は、南シナ海のパワーバランスに大きな影響を与える人物だ。

 
フィリピン次期大統領 ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Roa Duterte)
1945年生まれ。検察官を経て政界進出。88年、ダバオ市長に選出、下院議員の期間を挟んで7期務める。2016年6月30日大統領就任予定。
(AFLO=写真)
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