「朝会を始めたヒントは旧興銀時代のアメリカ留学体験から」

三木谷浩史氏はそう語る。

「ビジネススクールに留学した後、アメリカの投資銀行で3カ月間、研修をしました。その銀行では毎週月曜日にマンデー・モーニング・ミーティングをやっていたのです」

アメリカの投資銀行における「朝礼」は全社員が集まり、情報を共有することが目的だった。

「ですから、うちの朝会も情報共有を目的としています。たとえばある部署で困難な問題を解決したケースがあったら、それを朝会で発表してもらう。すると他部署の人は参考にして問題を突破することができる。また、新入社員にとっては経営幹部のハイレベルな議論を生で聞ける。グループ全体がどちらの方向へ進んでいるのかを肌で感じられれば、自分の仕事をするにも目的意識が出てきます」(三木谷氏)

この日のスピーチも「朝のエレベーターの混雑を解消するには」が、「人とは違う発想をする」話に繋がっていった。

この日のスピーチも「朝のエレベーターの混雑を解消するには」が、「人とは違う発想をする」話に繋がっていった。

三木谷氏は10年間、ほぼ休まず社員相手にスピーチをしてきた。大勢の前で話をするときに何かコツはあるのか。

「まず、ゆっくり話すこと。僕は以前、早口だと言われ、それを意識してからは努めてゆっくり話すようにしました。そして、もうひとつは自分が話したことのすべてが相手の記憶に残ると考えないこと。10話して、2もしくは3の内容が相手に伝われば、それでよしとすべきでしょう。それくらいの気持ちでスピーチをすれば、あまり緊張することはありません」

三木谷氏はさらに続けた。

「スピーチで私が意識しているのは英語で言うアイスブレーカー、関西弁で言うと、つかみってやつです。相手の金玉をぐっと握るために必要です」

確かに三木谷氏の話は面白い。楽天の社員たちは毎週月曜日の朝、三木谷氏に急所をぐっとつかまれて「さあ、みんなで頑張ろうぜ」と鼓舞されているのだ。

(尾関裕士=撮影)