沖縄教育出版の朝礼は「日本でいちばん長い朝礼」として知られるが、ほかにもいくつかの特徴がある。

・スピーチのスキルが鍛えられる:朝礼は1時間半行われる(月曜のみ。他の曜日は短時間)ので社員の出番は多い。朝礼に出ているうち自然と話すのが上手になる。

・人前での度胸がつく:同社の朝礼には多数の見学者がやってくる。新入社員であっても百数十人の前でスピーチをするため、度胸がつく。

・企画力がつく:大勢の聞き手をひきつけるには工夫がいる。それぞれの社員は発表に際して、ジョークを織り交ぜたり、図版を用意したりとさまざまなことを考える。企画力がアップする朝礼だ。

2人ペアになって行うストレッチ、「ハッピー体操」などでウオームアップ。

2人ペアになって行うストレッチ、「ハッピー体操」などでウオームアップ。

このように、同社の朝礼にはスピーチの力や企画力を伸ばすといった社員研修の要素も含まれている。発案者である川畑保夫社長は「当社の朝礼は社員が成長するためにある」と言う。

「仕事の連絡だけでなく、家庭のことや子どもの教育についても話をします。また、寸劇や踊りを入れる社員もいます。私がああやれこうやれと言うのでなく、社員が自発的に考えている。そうすることで、社員の発想力、コミュニケーション能力が増していく」

確かに、同社の朝礼を見学していると、新入社員でも実に話すのがうまい。

「芸事も人前でやらないと上達しません。話すこともそれと同じです。ちゃんとした舞台をつくると、話すほうも準備をします。そして、大きな舞台で話しているうちに力がつく。私は社員1人ひとりが成長することが企業の存続に結びつくと思っています。企業はそれぞれの社員が成長した分しか、成長しません」(川畑社長)

スピーチする力を磨きたいビジネスマンは同社の朝礼を見学すべきだ。ただし見学者もスピーチの機会があるから、覚悟してから申し込むこと。

(小原孝博=撮影)