今年9月、安倍晋三首相は先の自民党総裁選の公約にあった「介護離職ゼロ」の実現を明言した。介護離職とは、家族の介護のために仕事を辞めることで、仕事と介護の両立が困難になるのが主な理由だ。総務省労働力調査では、「看護・介護」を理由とした離職者は過去10年間、8万~9万人で推移している。
みずほ総合研究所政策調査部の大嶋寧子氏は、「団塊世代が2017年に70代に突入することは、要介護状態にある高齢者の増加要因となる」と指摘する。さらに、その子ども世代である団塊ジュニアは、未婚率が前の世代よりも高い。未婚の場合、親の介護を自分1人で引き受け、仕事と両立できなくなるケースも出てくるだろう。また、「介護の場合、突然問題に直面することがあるし、終わりや先行きの負担が見通しづらく、介護を行う人が精神的疲労を抱えやすい」(大嶋氏)という点が、介護離職の大きな要因になっている。
介護離職を減らすためには、社員が長期間にわたって柔軟な働き方ができるような職場体制に変えていく必要がある。たとえば、介護休業の利用促進、フレックスタイム制の導入などは有効だ。これまで子育て期の女性社員に対して使われてきた「仕事と家庭の両立」という言葉は今後、すべての社員に対して使われるようになるだろう。
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