発熱や下痢、痙攣などを起こしている患者の症状に関する情報を大量に収集し、統計的な手法で解析を行い、「何らかの疾病が発生し、流行している」といった事実を早期に把握、公衆衛生的な対応をとる仕組みを「症候群サーベイランス」と呼ぶ。各国の感染症対策は従来、医師の確定診断による届け出を基に行動に移されていた。だが2001年に米国で炭疽菌を用いたバイオテロが発生、確定診断がつく前の早期対応を迫られ、これをきっかけに症候群サーベイランスの重要性が認識された。また、新たな感染症や滅多に見られない感染症も確定診断するまでに時間を要するが、病気の特定を待っている間に感染が広がるので、この仕組みの必要性が指摘されている。
収集する患者情報にはさまざまな種類があり、たとえば、薬局における薬の薬効別購入数や、学校の欠席者の症状別人数、救急車の症状別搬送回数、症状がインターネットで検索された回数などがある。三菱総合研究所政策・経済研究センターの清水紹寛氏は「それぞれの種類で、情報収集のコスト、手間、頻度、精度などにメリットとデメリットがある。いくつかを組み合わせて分析することが必要」と解説する。新たな感染症の脅威やテロの危険性が高まる今、情報を常時収集し、異常を検知するシステムの整備が急務である。
(AFLO=写真)