皆を沸かせる一芸、企画・進行を含む宴会マネジメント力、酒の席で信頼をかちとる話術。ビジネスにも直結する「宴会力」の秘密を、ビール大手各社の宴会の達人に聞いてみた。
気がつけば今年も、いつの間にか忘年会シーズン。社内・社外を問わず、そうした場を盛り上げる「宴会力」は、「仕事力」とも直結する。
宴会に強いビジネスパーソンは、どこが違うのか。かねて「ビール会社の社員の宴会力はすごい」と耳にしていたプレジデント編集部は、大手各社の「宴会名人」を直撃してみた。
キリンビール・マーケティング部の永谷洋平さんの一芸は、「フレア・バーテンディング」。ボトルやシェイカーを華麗に空中で操りながら、実際にカクテルを作る大技だ。「大学時代のバイト先だったダイニングバーで出会い、感動のあまり猛特訓して覚えました」と永谷さん。確かに、撮影用に少しさわりをやってもらっただけでも、大変にかっこいい。
幹事役を務めるときに重視するのも、フレア・バーテンディングが与えるのと同じ、驚きと感動だ。送別会なら、主賓の昔の恩人を探し出し、サプライズゲストとして登場させる。出し物は同期の人脈を駆使し、極力オリジナルな一芸の持ち主を見つける。「笑いを取りにいくというより、本気を見せることを大事にしています。ものまねでも一発芸でも、得意なことを真剣にやる。それが見る人の心を動かすと思います」
一方、「いちばん大事なのはわかりやすさ。ベタであればあるほどいい」と言うのは、アサヒビール市場開発本部外食営業第二部の宇都宮敬さんだ。宇都宮さんの武器は、大学時代にサークルで身につけた競技ダンス。「ラテン系の曲であれば、たいてい踊れます」というものの、宴会用の選曲は「2億4千万の瞳」や「ギンギラギンにさりげなく」など、なるほどベタな往年の名曲だ。
営業先の飲食店オーナーの行きつけのスナックで踊ることもあれば、取引先の社内旅行のエキジビションとして場を盛り上げることもある。いずれも先方でのパフォーマンスだけに、失敗は許されない。「奇をてらう必要はありませんし、いつも同じ芸で『またこれか』と言われることも恐れなくていい。むしろ、やり続けることの面白さがあると思います」。