給料が上がらず、企業の接待交際費も絞られている昨今、接待の場を自らの遊びの場として活用しようとするケースがある。接待される側はひとりなのに、接待する側は10人近くいるなどという場合は見え見えで、主客転倒も甚だしい。招かれた客にとっては最悪だ。また“なじみの店”が利用される場合、店がお金を出す側ばかりを丁重にもてなし、肝心の接待される側が蚊帳の外といったケースもよくある。店にひとこと、誰が正客かを伝えておけばいいだけなのに、それができていない。
ほかにも、相手の趣味嗜好や最近の会食状況を調べずに店と料理・お酒を決める接待、話が筒抜けになる場所や騒がしい店での接待、若手や女性社員をこき使う接待は不快感を与える可能性が高い。
相手の趣味嗜好や最近の会食状況を知るには、秘書や同じ部署の人に聞けばいい。店選びについては、インターネットの口コミ情報に頼りすぎるのが最大の失敗要因となる。自ら足を運んだり、社内でその手の情報に詳しい人に相談すれば、防げるはずだ。とくに、外食の経験値が男性より高い女性社員は、格好の情報源。日頃のネットワークづくりが肝要だ。
一方、店に依存するだけでなく、自分ならではの演出があってもいいはずだ。私が実践した例では、ある接待のとき「今日、結婚記念日なんです」と話を切り出した人がいた。5、6年前に結婚したばかりだという。そこはワインバーだったので、店の人に「その年のワインはある?」と聞いたら、1万円のものがあった。少々懐具合が気になったものの、「奥様と祝ってください」とプレゼントした。
後日聞いた話では、奥様がたいそう喜んだそうで、そのことを感謝された。奥様としては「大切な結婚記念日だというのに、ダンナは仕事にかこつけて、ひとりだけおいしいものを食べにいった」と思っていたのが、「ちゃんと記念日を忘れないでいてくれた」となるわけだから、効果は絶大だ。