「性は生まれてから死ぬまで、生きるエネルギーなのです」と北村邦夫医師は語る。長寿のためには、恋愛とスキンシップは欠かせない。ラブホテル、お見合いパーティー、風俗のシニア向け最前線を追った。
男女が出会う絶好の機会は同窓会
「つき合っている女性は同じ年の66歳。高校のときの同期生です。彼女は男子生徒に人気があって、僕は憧れていても彼女を遠くから眺めているだけでした。2年前の同窓会で思い切って声をかけ、今ではホテルに一緒に行く関係に発展しました」
すでに気心が知れている相手が集う同窓会は、男女が知り合う絶好の機会だと話すのは、機械メーカーの元部長だった和田英治(仮名)氏だ。
「大学を卒業して会社勤めを42年間してきましたが、体裁をつくろい、世間に気ばかり使って日々を送る生活でした。ありのままの自分にもどって笑ったりはしゃいだりできる昔の仲間はありがたかった。その流れで彼女と次に会う約束をし、食事に行って、しかも彼女から手をつないでくる。嬉しかったですね」
こんな幸せ、人生にあるとは思わなかった、と顔をほころばせる和田氏は、妻と11年前に死別。50代半ばで閑職になり、仕事が終わると毎晩、焼酎を飲む日々だった。交際範囲も狭くなり、寂しくて、心の穴を埋めるものを求めて同窓会に出席。そして“金星”を手にしたのだ。
和田氏の彼女は夫と40代半ばで生き別れたバツイチ。和田氏は結婚を考えているが、彼女との楽しみの逢瀬は、同居家族の目を気にして、ラブホテルを利用しているという。
「娘夫婦が押しかけてきて実家で同居を始めたんです。娘は子育て真っ最中で家にいますから、彼女を家に呼んでセックスするわけにはいきません。娘家族と別居したい気持ちです。今は、リーズナブルで気軽に使えるラブホテルを利用しています」
退職して時間に余裕のある和田氏は、平日の昼間にラブホテルを利用している。ホテル街の路地に入ると学生や会社員らしき男女に交じって自分と同年代の熟年カップルをよく目にするのには驚いたという。