望まぬ「自分だけスター」

もう、ちょっとしたスターである。ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会で歴史的2勝を挙げた日本代表のフルバック五郎丸歩(ヤマハ発動機)。沈着冷静なゴールキック、からだを張るパントキャッチ、豪快なロングキック、スペースを突く力強いランニング、そして最後の砦としての猛タックル。凛々しい顔立ちもあってか、人気はうなぎのぼりなのだ。

「人気? よくわかりません。イギリスは、日本から遠く離れていますので」と五郎丸は照れる。でも兄までテレビに引っ張りだされているというのだから、日本での盛り上がりがわからないわけがない。

「まあ、悪い気はしません。プレーヤーなので、注目してもらえるのは最大の喜びでもあります。ただ僕ひとりがフォーカスされるのは望んではいません」

謙虚である。どちらかというと、シャイなタイプである。福岡県出身の29歳。佐賀工業高校、早稲田大学で活躍し、日本代表のキャップ(国代表戦出場)数は「56」を数える。

ラグビー選手として陽の当たる道を歩んできたが、2009年のヤマハ発動機ラグビー部の規模縮小で、プロ契約から社員契約となり、人間としての幅が広がった。