世界ランクも9位まで上昇
地鳴りのような「ジャパン」コールが会場全体を揺らす。ラグビーのワールドカップ(W杯)で、日本が2度の優勝を誇る南アフリカに劇的な逆転勝ちを収め、24年ぶりの白星を挙げた。スタンドの日本人ファンは感涙にむせび、W杯3大会連続出場の37歳、大野均(東芝)も男泣きした。
「ブライトンの喜び、いや“ブライトンの歓喜”ですね」。“キンちゃん”と誰からも親しまれる大野はそう、笑いと涙でくしゃくしゃになった顔で言った。試合ではからだを張った。ひたむきに。相手に突き刺さって、倒れてもすぐに立ち上がって、また南アの巨漢選手にぶつかっていった。
なぜ日本は勝てたのか。エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が就任して3年半。科学的トレーニングを取り入れながらも、世界一の猛練習を選手に課してきたからである。合宿では朝5時から、1日に3回、4回も練習をしたこともある。何の勝利? と問えば、キンちゃんは即答した。
「ハードワークの勝利でしょ」
傍からみれば奇跡でも、選手たちは本気で「勝つ」と信じていた。その思いがロスタイムの逆転トライにつながった。「W杯史上最大のアップセット(番狂わせ)」「アンビリーバブル!(信じられない)」「ラグビー界最大のショック」。翌日の新聞の一面は、そんな驚きの見出しとジャパンの笑顔が躍った。