海外で稼ぐ割合が増えた日本企業は、目まぐるしく変化する世界情勢の影響をまともに受けるようになっている。いっときの成功に酔いしれている暇はない。2015年、新しくトップに就任した男たちはどんな戦いを挑むのか。
年間出張200日超の現場経験で勝負
良品計画の勢いが止まらない。2015年2月期決算は12期連続増収、4期連続増益により過去最高益を更新。今期は第1四半期で純利益が前年同期比65%増となり、早くも通期業績見通しを上方修正した。好調の背景に海外事業の成長があるが、その立役者が松崎曉氏である。海外事業のエキスパートは、次の一手をどう考えているのか。
――海外部門が長かった。
【松崎】西友時代は法務部門に11年4カ月いて、国際法務を担当。良品計画は1991年にロンドンに海外1号店を出したが、そのとき英リバティとのパートナーシップ契約書を作成したのも私だった。その後、国際事業部門を11年6カ月やり、05年に良品計画に入社してからもずっと海外事業を見てきた。
――印象に残っている仕事は?
【松崎】01年、西友にウォルマートが資本参加を決めた。私たちは海外事業を継続したかったが「西友の海外事業に関心はない。すべて売却してほしい」と。当時、執行役員海外事業部長だった私は4年かけて各地の事業を清算した。多くの人に迷惑をかけたが、そのとき支えてくれた人たちとはいまも協力関係にある。タイでスーパーの一部を購入してくれたセントラルグループは、MUJIのライセンシーからスタートして、いまは合弁会社を一緒にやっている。当時からの信頼関係は大きな財産だ。
――撤退戦を強いられた西友時代から一転、良品計画では出店攻勢。
【松崎】進出は清算と違って楽しい。ただ、もちろん簡単にはいかない。私どもの海外戦略は1店舗1店舗黒字。05年に上海に出店したが、本部のオフィスを借りる余裕はないので、空調のないバックスペースを事務所に使っていた。オフィスを借りるまでに5年かかった。