サラリーマン最大の関心事「出世」。その基準は業種や会社によってずいぶん違う。今はどんな人が上にいくのか。

銀行と商社ではどこが違うか?

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出世するタイプは業界の「位置」で決まる!

まず業界ごとの違いを知りたい。人事の専門家でヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス社長の渡部昭彦氏に聞くと、消費者市場からの距離が近い「BtoC(消費者向けビジネス)」と距離が遠い「BtoB(事業者向けビジネス)」に分け、さらに扱う商品やサービスの流動性が高い「フロービジネス」とインフラ型の「ストックビジネス」に分けて解説してくれた(図)。出世の傾向として、商社やITや証券は「外向きの営業系が優位」で、銀行や製造業(素材系)は「内向きのスタッフ系が優位」という。

「銀行は今でも減点主義なので、本店業務や法人営業を担当した人の中で、スマートでソツのないタイプが上にいく。同じ金融でも証券は少し異なり、まずは営業で実績を挙げた人が出世するが、役員クラスにはバランスのとれたタイプが登用されます」。理由は、役員になると主幹事証券会社として事業会社の経営幹部との付き合いも増え、求められる資質が変わるためだとか。

次に商社は「採用人数も銀行に比べて少ないのでエッジのきいた人が入社する。個性的な人が出世するという意味では銀行と正反対」という。総合商社の副社長を経て公共放送の会長に就任した某氏のようなタイプは、銀行での出世は難しいだろう。

製造業の場合、出世するタイプが異なる。「製品というモノが生命線なので、研究開発や生産技術といった地道さが大切な業務も多く、ソツのなさは求められません。偉くなっても純朴な人が多い」(渡部氏)。

図の一方の軸であるフロービジネスは、小売りに代表されるように商品が頻繁に動き、その場での判断が求められる業種だ。銀行員のような緻密さや慎重さよりも、即断即決のできる行動力が求められる。もっとも、「とくにスーパーはオーナー系が多いので、従順な人が評価されます。行動する馬力はあるが、自己主張をしない人が上にいくケースが目立つ」という特徴も。

ただし、同じ小売業でも百貨店は例外だ。「呉服系の老舗にしろ電鉄系にしろ、大手百貨店の多くはすでにオーナー系ではありません。だからスーパーなどに比べると、したたかな人が出世しています」と指摘する。

ITに関しては「営業能力とコンサル能力の2要素が必要。顧客を獲得して数字を上げる部分は馬力といえるが、論理性が必要なのでスマートな営業マンといったタイプ」となる。