早くからキャリア形成に目覚める
「学歴を重視し、配属や昇格などを決めているとは思えないです。私の世代でいえば、営業の成績がよい人は、昇格が早い傾向があるようには見えますね」
アサヒビールの人事部の採用・成長支援グループの山添綾さんが語る。早稲田大学法学部を卒業し、2006年にアサヒビールに入社した。同社は、大卒の新卒採用では事務系と技術系にわけられるが、文系の多くは事務系となる。山添さんは、事務系としての採用となった。事務系は同期生が25人で、そのうち女性は5人。早稲田大卒は、25人のうち5人だった。
「採用者数を今よりは少なくしていた時期です。早稲田卒の同期会? 私が知る限り、ないですよ。特定の大学に絞っての採用はしていませんから、毎年、この割合で早稲田卒の人が入社するわけではないのです。年により、その数は異なります。私が入社した年はたまたま、多かったのだと思います。マンモス大学ですからね。東大? たぶん、ひとりだったように思います」
アサヒビールは、大卒の新卒として入った直後は営業に関わることが多いようだ。山添さんは、千葉支社の量販営業部に配属された。スーパーやドラッグストアなどに営業をする。
「同期は、全国各地の比較的規模の大きな支社に配属された人が多かったのです。私の場合は、千葉出身(県立木更津高校卒)ということも、多少、配慮されたのかもしれません。
早稲田の法学部卒のアドバンテージ? いや、それはないと思いますよ。女性であることには、少し気を使っていただいたのかな、とは感じます。職場で出身大学の話題になることはなかったように思います。その頃の上司の卒業大学も知りませんでした」
営業で訪問する先々で、新入社員ということもあり、かわいがられたと振り返る。そして、上司や先輩の社員に恵まれたと話す。
「数歳上の女性の先輩が、キャリア形成についていろいろと教えてくれました。例えば、『早いうちから、希望する部署や仕事について考えたほうがいいよ』『希望する部署は、きちんとキャリアデザイン・シートに書いたほうがいい』と。この方の影響もあり、今後、どのようにキャリアを積んでいくか、と考えるようになったのです」
営業の仕事にも魅力を感じていたが、しだいに管理部門の仕事に強い関心を持つようになる。願いが叶い、2年半後の2009年、首都圏営業部を統括する本部に異動となり、総務に携わる。
「他部署への異動希望は、すべての社員がその年にかなうわけではないのですが、少し長い期間で見ると、多くの人がどこかのタイミングで希望する部署などへ異動できるようになっています」