國學院大に進学するも、美学校へ

「美学校に通っていなかったら、今のようにはなっていないでしょうね。あの学校で学んだことは、ものすごく大きかった」

イラストレーターの森伸之氏。國學院大學卒。

女子高生や婦人警察官、OLなどの制服をかわいらしくも、健康的なタッチで描くことで知られる、イラストレーターの森伸之氏(54歳)が自らのキャリアを振り返る。

千葉県立柏高校を卒業し、1981年に國學院大學文学部(日本文学科)に入学すると、美学校(千代田区)に通い始めた。芸術家として第一線で活躍する講師が、絵画や版画・写真などを教えることで、ユニークな生徒を輩出している学校だ。

美術家であり、作家の赤瀬川原平氏(故人)が講師をつとめる考現学研究室の授業を受けることに特に喜びを感じたという。一方で、高校2年の頃から取り組んでいた、女子高生の制服のイラストを描くことを本格化させた。

下校時に、都内の女子高の正門付近や最寄り駅に出向く。制服やかばん、髪形、着こなし、雰囲気などをメモした。文庫本を読むふりをして、ページの片隅に気がつくことを書き込んだ。

「カメラで撮影? いや、しませんでしたね。それでは、明らかに不審者でしょう(笑)。メモするだけならば、女子高生や学校側とトラブルに1度もなりませんでした。当時の女子高は、それぞれの学校に強い個性がありました。制服のデザインや着こなし、表情に校風が現れているんです。そこに魅力を感じていたのです」

都内のすべての私立女子校に出向き、念入りにメモを続けた。それらをもとに、制服を着た女子高生の姿をイラストとして描いた。

「たくさんの生徒を観察し、平均的な姿を思い起こしながら、描くのです。かばんの持ち方、ソックスの長さや履き方、靴、身のこなしまで細かく描くと、学校の個性が出てきます」

最も強い衝撃を受けたのが、東京女学館(渋谷区)だったという。千葉県に限らないが、当時、女子高生は丈の長いスカートをはくのが一般的だった。

「女学館の制服は、冬なのに、白色のセーラ服で丈が短いスカート。ひざまでくらい。そして、白のハイソックス。すげえ~、これが東京だ、と思いました。かわいかったですね。都内のすべての女子高の制服を知りたい、絵にしたい、と衝動に駆られたほどです」