難関資格試験にトリプル合格

「学歴自体には、値打ちもブランドもないと思う。だけど、いますよね? 自らを“○○大卒”とレッテル張る人……。キャリアや実績に自信がないから、大きくみせようとするんでしょうね。社会保険労務士にも、そんな人が多い。“社労士”ってアピールするけど、誰も高く評価しませんよ。ところが、社労士が互いに“私たちはすごいよね”と励まし合う。自信がないからでしょう(苦笑)」

社会保険労務士として独立・開業し、26年を超える中村紳一氏(52)が淡々と語る。最近、社労士の中には「弁護士と社労士の境界線がなくなり、双方の扱いがやがて同じようになる」と話す人がいる。「弁護士・社労士」と自慢気に口にする人も現れた。

中村氏は笑いながら「そんなことは絶対にありえない」と否定する。

社会保険労務士の中村紳一さん。立命館大学社会学部卒

「そりゃあ、弁護士に対して失礼です。弁護士は、純然たる法律家。社労士は、あえていえば法律実務家。労働保険や社会保険の事務手続きをしたり、小さな会社の就業規則や賃金規定をつくるのが仕事。それらには、リーガル思考なんていらないわけですよ。そんな素養がないのに、弁護士と同じ扱いを受けることはありえない」

一方で、「弁護士・社労士」という言葉には、一定の理解も示した。

「営業用セールストークとして、弁護士と同じくらいに偉いんだぞ、とアピールするならば、実情を知らない人が仕事を与えてくれるかもしれません。だけど、本当に弁護士と対等になると思い込んでいるならば、勘違いも甚だしいでしょう。弁護士と社労士の仕事の領域や扱い、社会的な信用や地位はどこまで行っても交わることはありえません。“弁護士・社労士”なんてのは、レッテルの張り方を間違えています」

中村氏は大宮高校(埼玉県)を経て、1985年に立命館大学社会学部(産業社会学科)を卒業した。大手メーカーで、官公庁や大企業などにエレベーターの交換や設置を交渉する営業に4年ほど関わる。「学歴コンプレックス」の高卒の上司にいじめを受けることもあったが、営業成績は常に上位だった。人事評価や配属などで、学歴を意識することはなかったという。