いつ、どこで大規模停電が起きてもおかしくない

一般的に電力の安定供給には8~10%の予備力が必要である。8%を切ると、異常気象に、発電所の故障や送電線の不調が重なる「最悪の事態」に対応することができなくなる。原発依存度の高かった関西電力管内では、東日本大震災以降、高水準での予備力を確保できず、3%を最低基準とするギリギリの運営を続けてきた。この3%という値は「(本来8%必要であるが)原発が稼働していない現状では達成不可能なので、便宜的に定めた値」であり、安全を保証するものではない。

資源エネルギー庁の発表によれば、今回の故障により、7月の関西電力の予備力はマイナス3.1%まで低下。予想される最大電力需要をまかなえず、停電必至の状態だ。中部電力、北陸電力などから追加融通を受け、ギリギリ3%を維持できることにはなったが、予断を許さない状態が続いている。

九州電力も電力供給が大ピンチで、特に目立った事故があるわけでもないのに、他社からの融通を受けられないと、予備力はマイナス3.3%だ。関西と九州は他社で余っている電力を融通してもらう必要があるのだ。

他地域に比べて、火力発電所の設備が充実していて余力があるのは東京電力だが、中部以西の各社とは周波数が違うので融通には限界がある。西日本の電力各社が協力し合うことで関西と九州の予備力がギリギリ3%を保てる見込みだが、あくまでも、7~8月にこれ以上の故障が発生しない、という条件がつく。日本中で、安定的な10%以上の予備力を確保できているのは、北海道と四国の2社しかない。例えば、中部電力には送電線が集中しているところがあるが、ここが何らかのトラブルに巻き込まれたら、関西と九州は大規模停電が起きるだろう。このままでは、いつ、どこで大規模停電が起きてもおかしくない。

国民の生命と財産を守るという国家の本義に照らして、早急な原発再稼働を進めてほしい。本来なら、予備力が10%を超えた段階ではじめて、脱原発や(自由化などの)コスト削減の議論に入るべきだった。

(写真=時事通信フォト)
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