今年のピーク電力は乗り越えられるか

今年もまた、電力消費がピークになる夏を迎えた。2011年の東日本大震災から4年あまり、国内の原子力発電所がすべて運転停止というなかで、幸いにも大停電は起きていない。この間、老朽化した火力発電所の稼働や定期検査時期の調整など火力を中心とした供給力確保策により、難局を何とかしのいできた。だが、日本の電力の安定供給は依然として予断を許さない状況に置かれている。

それだけに、原発再稼働の是非が繰り返し俎上に上る。その行方を左右するのが、原発の安全性を審査する原子力規制委員会だ。同委員会は、福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、地震や津波といった自然災害対策の強化など、従来の基準を大幅に見直すとともに、放射性物質の拡散防止など重大事故への対策が盛り込まれた新規制基準を策定し、審査会合を開催してきた。これまでに、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)、そして、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)を新基準に適合すると判断しており、早ければ今夏の再稼働も取りざたされている。

こうした中、7月16日、政府の長期エネルギー需給見通し小委員会において、2030年時点での「望ましい電源構成(ベストミックス)」が決定された。ここでは、原子力の比率を「20~22%」と東日本大震災前の28.6%より低く抑えた。逆に再エネは、「22~24%」という方針を掲げた。この方針の重要な検討要素となったのが、今年2~5月に行われた「発電コスト検証ワーキンググループ」による各電源の発電コストなどについての検証である。具体的には、原子力、火力、再エネといった電源別にモデルプラントを用いて、キロワット時(kWh)の発電コストを検証してきた。それによって、現在および近い将来の“エネルギーミックス”、すなわち発電方法をバランスよく組み合わせていこうというわけだ。

その内容について、日本エネルギー経済研究所研究主幹の村上朋子さんは「原子力は設備利用率を70%と設定すると、足元の2014年モデルプラントで10.1円~/kWhと一番安い。私どもでは、各電力会社の出している有価証券報告書も用いて、電源別長期発電コストの推移も評価したが、やはり同じ結果になりました」と話す。その他の発電コストでは、石炭火力が12.3円/kWh、LNG火力が13.7/kWh、風力発電(陸上)が21.6円/kWhとなった。