「原子力の発電コスト」とは

ここで特筆されるのは、発電コストの内訳だろう。資本費(設備費)や運転維持費、燃料費といった基本的な項目に加えて、立地交付金などの政策経費が含まれる。さらに原子力のコストには、新規制基準に基づく追加的な安全対策費や、事故時の損害賠償や除染などの事故リスク対応費用、使用済燃料の再処理や最終処分の費用などいったバックエンドコストなども含まれる。事故リスク対応費用については、福島第一原子力発電所の事故対応費用を基に約9.1兆円と想定し、発電コストへ反映した。尚、この費用は増える可能性もあり、1兆円増えると、0.04円/kWh増加するとしている。

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電源別発電コスト(2014年モデルプラント試算結果)

「コストの多寡よりも、なぜ、この発電コストになったのか条件や根拠を示すことが大事」と村上さんは話す。特に今回の検証ワーキングでは、追加的な安全対策費用と事故リスク対応費用の関係をどう読み込むかが話題になった。結果としては、安全対策によって事故の発生頻度が下がるという考えに基づき、追加的安全対策費は前回検証時の0.24円/kWhから0.6円/kWhへ上昇し、事故リスク対応費用は0.54円/kWhから0.3円/kWhへ減少した。

もちろん、火力にも再エネにも、それぞれ一長一短はある。火力の石炭、石油、LNGは安定した運転が可能なことから、重要な電源として期待できる。半面、調達を海外に依存していることから、原油価格や為替相場等の価格面の問題のみならず、中東情勢等の調達リスクをも抱えている。調達コストの低減や調達先の多様化という点で、シェールガスなどにも注目が集まっているが、村上さんによれば、「すでに調達契約が想定コストに入っている。しかし、欧米並みの価格実現は難しい」という。さらに原発や再エネにないCO2対策費が必要になる。一方、再エネは、何よりもクリーンという特性を持つものの、新規設置のための資本費が高く、メガソーラーの発電コストは24.2円/kWhと高い。しかも、そのコストには系統安定化費用は計上されておらず、実際に大量に利用する場合のコストは、さらに高くなる可能性が高い。