なぜ、同じ製品をわざわざ日本で買うか
私は昔から銀座という街が好きだ。休日の昼間、歩行者天国をブラブラするのが趣味なのだが、最近は、銀座もずいぶんと変わったものだと思う。我々はゆっくりするのが目的で出かけているのに、中国人観光客がキャリーバッグを引きずりながら、せわしなく歩きまわっている。
上海、香港の中国人が内陸部の中国人を評して「うるさい、汚い、タンを吐く」と軽蔑するのを聞いたことがあるが、中国人観光客のマナーの悪さを見るにつけ、あまり深い付き合いはしたくないと考えるのは上海人、香港人だけではないだろう。
中国では反日教育が盛んなのに、なぜ彼らは日本に来るのか。それは、彼らに人気の炊飯器や温水洗浄便座に代表されるような、“日本製”がほしいからだろう。しかし、実は日本企業の工場は中国に進出していて、同じ製品が自国でも手に入る。わざわざ日本にやって来て、中国でも販売している製品を指さして、店員に「これはメード・イン・ジャパンか」としつこく確認しながら買っていくのは、中国人が「メード・イン・チャイナ」の製品を信用していないのだ。それが「爆買い」の実態だ。
人件費の安さに魅力を感じて日本企業が中国に進出しても、中国特有の問題で結果を出せないことが多いという。ある程度の業績を残していても、景気減退懸念や人件費の高騰、中国政府による介入に嫌気がさして中国国内から製造拠点や営業拠点を撤退しようという企業が増えている。しかし、従業員への補償や、さまざまな契約に縛られて、撤退するのも大変な状況である。中国での製造によって、ブランドイメージが悪化したり、中国特有のさまざまなコストが負担にならないようにしたりするために、せめて新製品、新型モデルの製造だけでも、一刻も早く中国から移動させたほうがいい。