ネット通販に威力「止めない物流」

引っ越し子会社の役員になった2003年秋、41歳のころからだろうか。呼ばなくても、部下たちが間断なくやってくる。報告や連絡、相談、いわゆる「ほう・れん・そう」のなかでは、相談事が多かった。

ときには、あまり出来のよくない話もある。でも、最後まで聞いた。メモも、必ず残す。不完全な話のなかにも、次の一手へのヒントがあるし、危機管理につながる落とし穴も潜んでいる。相談しやすい人、というのは、悪いことではない。自分が動かなくても、みんなが自分のほうを向いてくれるのも、ありがたい。それに、何よりも人間好きだし、冗長な話を聞くのも苦にはならない。

ヤマトホールディングス社長 山内雅喜

そんな日々を過ごして4年半、物流やシステム開発を手がけるヤマトロジスティクスの社長になったころには、東京都中央区入船の本社にいると、社長室の前に行列ができるようにまでなる。朝から夕方まで続くので、自分の仕事は日が暮れてから片づけた。もちろん、帰宅が遅くなるのも、苦ではない。週末に好きなテニスを楽しめば、寝不足は吹き飛んだ。

様々な商品を次々に流し、商品コードやバーコードを活用して、必要なものを必要な数だけ自動的に取り出すFRAPS(Free Rack Auto Pick System)。これが実現したのも、そんな「ほう・れん・そう」のなかからだった。