身元保証の責任は身元の保証に非ず
親戚の大学生から「就職が決まったから、身元保証人になって」と頼まれたとしよう。「身元」とは、辞書的にはその人の経歴や素性を意味する言葉だ。だから、「彼の経歴や素性が確かであることを保証する推薦状のようなものだろう」と考えるのは自然なことだ。しかし、法的な意味合いはこれとは異なる。身元保証人とは、労働者が会社に対して債務を負った場合、その債務を保証する人のこと。たとえば身元保証された人間が商品を壊したり、お金を使い込むなどして損害を賠償しなければならなくなったとき、身元保証人は債務を肩代わりする責任を持つ。借金の保証人に似たものだ。
それどころか、身元保証人が負うリスクは借金の保証人より高いという。千葉博弁護士は次のように解説する。
「借金の保証は、すでに発生している債務に対する保証なので、額や利息を確かめて判断できます。一方、身元保証は、サインの時点で債務が発生していません。つまり、最悪いくらになるのかということがわからないまま判断を迫られるのです」
それではあまりに身元保証人が気の毒だ。そこで身元保証人が負うべき責任に関しては、民法と別に「身元保証法」で制限がつけられている。