孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。
Q. 後継者は孫正義の「志」を引き継ぐべきか
経済の先行きは、つねに不透明だ。その中で創業の理念は、経営の背骨になる。だが理念に縛られて事業継続が危うくなれば、元も子もない。A案は、「志」を第一に。B案は、時代に合わせて解釈を変えていく。【A】引き継ぐ【B】時代の変化に合わせる
(正答率50%)
創業者にも引退するときがやってきます。そのとき、企業は創業者の思想や理念を、どこまで引き継ぎ、踏襲していけばいいのか。
この僕にも遠からず、経営のバトンを誰かに渡す時期がやってくるでしょう。その人に対して望むのは、ソフトバンクの本質、つまり理念やビジョンといった「志」だけは、絶対に変えないでほしいということです。志は、いわば根っこの部分。ぐいっと重心をかける軸足の部分です。それは我々が企業として「なぜ存在するのか」というアイデンティティーに関わります。
「情報革命で人々を幸せに」
短い言葉ですが、この「人の幸せを願う」ことがソフトバンクの志です。
僕は創業直後、大病を患いました。そのとき、つくづく思ったのです。お金じゃない。地位でも名誉でもない、と。綺麗事に聞こえるかもしれません。かつて、僕を可愛がってくれた、おばあちゃんはいつもこう話していました。
「人様のおかげだ。どんなに苦しいことがあっても、どんなにつらいことがあっても誰かが助けてくれた。人様のおかげだ。だから絶対人を恨んだらいかんばい。人様のおかげやけん」
おばあちゃんがやっていたような、人に喜んでもらえること――。僕は、病院のベッドの上で、そういった人々に貢献する仕事こそが、自分の使命だと感じたのです。