ピラミッドからWeb型、資本的結合から同志へ
もうひとつ、ぜひ踏襲してほしいことは、何千のグループ企業が自律・協調しながら、同じ志をもって活発に動くという仕組みです。それを、ソフトバンクグループのDNAとして受け継いでいってほしい。
20世紀型の企業は、価格や技術を競争力として、大量生産の戦略を採ってきました。そのためブランドはシングルブランドで、大きければ大きいほどよかった。会社組織はピラミッド型の中央集権でした。
私は21世紀型の企業は、多様さや安心を競争力として、多品種少量生産の戦略を採るようになると考えています。マルチブランドを展開することで、進化のスピードは速くなる。会社組織は「Web型」になっていく。集権と分権のバランスがとれていて、超高速の意思決定ができる組織です。
つまり、管理・支配型ではなく、自律・協調型にしたい。100%子会社という資本的結合ではなく、20~40%程度の資本提携をした同志的結合の集団をつくりたい。そうした組織であれば、また新たなダイナミズムが生まれてくるのだと信じています。
前・神戸大学大学院教授 加護野忠男氏が解説
私は企業経営において、(1)社会貢献を志す市民精神、(2)事業の継続性を目指す企業精神、(3)利益を追求する営利精神、という3つのバランスが重要だと考えている。その点で「情報革命で人々を幸せに」という孫社長の志は評価に値する。経営者とは、取りようのないほど大きな責任を求められる存在だ。「拠って立つもの」がなければ、飛躍のある意思決定はできない。創業の志を踏まえた経営には強みがあるといえる。
●正解【A】――「志」は企業の存在理由にかかわるものだから
※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。
(大塚常好、小澤啓司、原 英次郎、宮内 健、村上 敬=構成)