軋轢や不満も笑いに変える仕組み

軋轢や不満を表に出し、そのエネルギーを前向きな方向に向けさせるユニークな方法を確立することも大切だ。

カリフォルニア州にある世界的なイノベーション・コンサルティング会社、IDEOのあるチームは、感情が激したとき自分のデスクを囲っているパネルの上にぬいぐるみを放り投げることにした。これは雰囲気を明るくするだけでなく、チームが厄介な感情を表現するためのルールを確立していると各人に思い起こさせる役割もあった。

別の例を挙げると、前述のゼロックスのチームでは、メンバーは自分の不満を紙に書き、問題の深刻度によって額面1ドルから100ドルまでのおもちゃの紙幣を付け「チャンスの壷」に投げ入れていた。額面の大きい紙幣が付けられたものから取り上げられ、ミーティングで議論された。

この方法は、チームのEQを高めるのにいくつかの点で役立った。第一に、自分の不満を破壊的な形で表現したいというメンバーの衝動を和らげ、信頼を高めた。「自分を悩ませている問題を預けられるところをつくれば、メンバーは胸のつかえをおろして平常どおりに仕事を続けることができる」と、ゼロックス・チームにコーチングを行ったレクシコープ・サービシズ(オンタリオ州ミシソーガ)のCEO、リンダ・ロペケは言う。

第二に、不満のあるメンバーは自分の不満が公正かつ前向きに処理されるのを目にした。たとえば、あるメンバーがしょっちゅう話しにきて邪魔になるという不満に対しては、チームは遊び心あふれる解決策を編み出した。「診療中」「休診中」という札をつくって、イスの背にかけることにしたのである。「診療中」の札がかかっているときは話しにきてよいが、「休診中」の札のときは話しかけてはいけないことにした。

第三に、チャンスの壷は、メンバーがチームの仕事を前進させる力になりながら新たなスキルを習得できるようにすることで、本当のチャンスを提供した。例を挙げると、メンバーは社外で仕事をしているときはゼロックスのファイアウオールを通過できないということが明らかになった。問題解決に名乗りを上げたメンバーはIT専門家ではなかったが、問題の原因を見つけて除去するのに十分なコンピュータの知識と好奇心、それに辛抱強さを備えていたのだ。