本当の予算はいくらか→「空気を読まない担当」を仕込む

オイシックス社長 高島宏平氏

大企業が備品の購入や宣伝・販売促進のキャンペーンを検討している。こういうとき、予算額は案外センシティブな話題である。事前に開示されるわけではなく、正確なところはわからない。

しかし、商品を売り込む側としては、成約に至ったときに最大どれくらいのビジネスになるか、あらかじめ規模感をつかんでおきたい。その際に役に立つのが、高島氏のいう「空気を読まない担当」である。

「で、予算はどのくらいなんですか?」

営業に同行した「空気を読まない担当」は、その場の責任者を差し置いて、ずけずけとストレートに質問する。もちろん、事前に役割分担をしておくのだ。

もしそれが失礼な振る舞いだととられても、憎まれるのはあくまでも「空気を読まない担当」であり、責任者や会社自体は傷つかない。責任者が「おい(そんな失礼なことを聞くな)」と小声でたしなめてもいいだろう。

役割分担をしようにも、一人で交渉に臨むときはどうするか。高島氏は「わざと否定されそうな仮説をぶつけてみることもありますよ」という。たとえば、次のように。

「御社クラスだと、1億円くらいの予算規模ですか?」

「いや、そんなにはないんですが……」

相手はつい、ぽろりと本音をこぼすかもしれない。そうすれば、少しは規模感がつかめるに違いないのだ。

TFTの小暮氏も、相手企業の予算規模が読めずに往生することがあるという。たとえば企業側が一定期間のキャンペーンとしてTFTのプログラムに参加する、という場合である。

「TFTの寄付は本来、消費者が負担しますが、企業が自社負担するというケースもあります。そのときに、全体の予算規模が明確でないと、一食あたりの寄付の設定額やどういう商品を対象にするのか、対象店舗数はどれくらいか、という実務の部分を進められないのです」

もちろん、予算額がわからなければ、お腹を空かせているアフリカの子供たちの何人を助けられるかということも算定できない。小暮氏は、ずばりと切り込む代わりに、さりげなく実績を示すことで相手の反応を見るという。

「過去に僕たちが別の会社とやってきたキャンペーンの事例をご説明します。そのときに『寄付額を一食あたり何円に設定して、合計金額としてこれだけ集まりました』と付け加えるのです。相手によっては、具体的な金額ではなくよりソフトに『何食分の寄付になりました』と、ふさわしい単位に置き換えてみることもしています」