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価格交渉ではないが、採用面接の例を引くとこうなる。

「○○さん、給料いくら必要ですか?」

「いまの家賃いくらですか?」

「ローンとかあるんですか?」

すると、たじろぎながらも、腹を割って話してくれる人が多いという。

一方、納期の交渉をしないという梶川氏は、値引き交渉とも距離を置く。もちろん適正価格であることが前提だが、言い値を受け入れ、取引相手を尊重することで、最終消費者に付加価値や満足度の高いサービスを提供するのだ。

「海外と違って階級社会とはいえない日本では、現場の従業員も教育レベルが高く意識が高い。取引先も同様で、良い仕事をする原動力は、お金よりも『尊重してもらっている』という思いです。『高い料金はコンサルタントのプライドだ』というのは堀紘一さん(元BCG日本法人社長)の名言ですが、まさに価格はプライドです。そういう形で尊重されていないと、関係は長く続かないと思います」

取引先を尊重すると、いったい何が起きるのか。

「ある日、斬新なアイデアを提案してもらえます。『梶川さん、こんな原材料があるんです。おもしろいのができそうだけど、興味ありますか?』みたいに」

梶川氏が望むのは、近視眼的な値引きではない。付加価値を高めるための、こういった提案なのである。

ウェルネス・アリーナ社長 梶川 貴子(かじかわ・たかこ)
津田塾大学卒業後、仏の欧州経営大学院(INSEAD)にてMSIB修了。1987年BCG入社。日本コカ・コーラなどを経て、ウィンザーホテル洞爺などの再生に参画。2006年より現職。

NPO法人 TABLE FOR TWO インターナショナル 代表理事 小暮 真久
(こぐれ・まさひさ)
1972年生まれ。早稲田大学卒業後、豪スインバン工科大で修士号取得。99年マッキンゼー入社。松竹を経て2007年より現職。著書は『「20円」で世界をつなぐ仕事』ほか。

オイシックス社長 高島 宏平
(たかしま・こうへい)
1973年生まれ。東京大学大学院修了後、マッキンゼー入社。2000年オイシックス設立。07年企業家ネットワーク主催「企業家賞」受賞。著書は『ライフ・イズ・ベジタブル』。

(相澤正=撮影 PIXTA=写真)
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