この業者を信頼しても大丈夫か? 先方の本当の予算はいくらか――。相手の心を読み解くスキルを、世界三大コンサルティングファームで研鑽を積んだトップビジネスマンが公開。「上司・部下篇」「顧客・取引先篇」と、相手別、状況別にお届けする。
◎顧客・取引先篇「売り上げ倍増、コスト半減」の心理交渉【2】
本気で買おうとしているか→いま何にいちばん時間を使っているかを聞く
アフリカの小学校に給食費用を補助する活動を続けているNPO法人TABLE FOR TWO International(以下TFT)の理念は、市民や企業の共感を得やすく、仕組みもシンプルでわかりやすい。プログラムへの参加を呼びかけると、かなりの企業が前向きな姿勢を示すという。だが現実には、そこから先へ進むのが難しい。
理念には賛同するが、参加するには躊躇がある。商品になぞらえると、「興味はあるが、本気で買いたいわけではない」ということだ。見込みがないなら、それ以上アプローチするのは無駄である。どこで見極めをつけたらいいか。
さりげない対話のなかから課題を見つけ出すのが、TFT代表理事、小暮真久氏のやり方だ。解決不能でない限り、話し方しだいで相手の背中を押すことはできる。だから「現時点で本気かどうか」より、「解決可能かどうか」が判断のポイントである。
このとき、表向きの言葉にこだわりすぎると、真の理由を見落としてしまう。よくあるのが、次のような誤解である。
交渉中、導入の障害になりそうな小さな理由がいくつか出てきたので、TFT側は一つ一つ根気強く説明し説得を重ねていく。ところが、課題を解決したように見えても、遅々として話が進まない。
そのうちに見えてくるのが、「業務が増えると面倒だ」という担当者の本音である。真の問題はここにある。
その場合、「僕たちのほうが手を動かすことで作業の軽減を図ったり、業務内容を詳しく説明して、先方が思うほど面倒な仕事ではないことを納得してもらいます」(小暮氏)。
他社と共同で、とあるプロジェクトを進めている。相手は本気なのか。オイシックス社長の高島宏平氏によれば、それを見抜くためのとっておきの質問がある。
「ところで○○さん、いま何にいちばん時間を使っているんですか?」
雑談のようでもあり、すぐには意図が呑み込めない相手は、「Aですかねえ」と正直に答える。「それは何%くらいですか?」「2番目は?」「3番目は?」「うちの案件は何%くらいの比重でやっていますか?」こう畳み掛けると、相手は、正直に「空いている時間にしかできないんですよ」と告白するしかない。
「ふつう『本気ですか?』と聞いたら『本気です』と答えます。しかし80%の時間を使っている『本気』と、5%の『本気』ではまったく違います。5%のまま事業提携の契約を結んでしまったら、こちらは準備ができているのに先方が動かないというおそれがありますから、大きなリスクです。そこの見極めが必要です」