商談のキーマンは誰か→「動く人」のサインを発しているかどうか
ウェルネス・アリーナは軽井沢プリンスホテルなどのスパ施設を運営するだけでなく、飲食や宿泊などホテルの各部門を巻き込み、エステを中心とした2泊3日の特別プランを企画する、といった仕事も手掛けている。そのため、ホテルの部署ごとにキーパーソンを見つけてプランに協力してもらう必要がある。
梶川氏は、ホテル側との会議では次のようなところに注目する。
「このチームに配属されてうれしい、という雰囲気を出している人。あるいは別の部署から異動してきたとき、会議に入る前にちらっと『よろしくお願いします』と一言あいさつしてくれる人。こういう人たちが、各部署のキーマンです。役職とはあまり関係なく、現場で積極的に動いてくれる人たちです」
こうして梶川氏は、少しのサインも見逃さず、「動く人」を探している。
事業提携などの場面でも、できるだけ「動く人」を交渉相手にしなければならない。得てして「動かない人」が交渉の前面に出てきてしまうことがあるからだ。高島氏の経験ではこうである。
「交渉して仕事を進めていくときに大事なことは、頭がよくて話し上手な人ではなく、あくまでも『やること』が得意な人と組まなくてはいけないということです。相手のほうは理路整然と納得感のあることをしゃべるんだけれど、面談が終わった後、とくに何も起きない。そういうことはたまにあります。アドバイスを求めるとしたら適任かもしれないけれど、交渉相手としては困る人。それを見抜かないといけません」
「動かない人」を見破るには、2回目の面談で「前回と今回との間にどれだけの活動をしたか」を確認することだという。
交渉相手が社内各部署からの寄せ集め部隊で、役職だけでは誰が意思決定者かわからない場合もある。このときの対処法がおもしろい。
「答えが準備されていない質問をしてみます。すると、みんながある特定の人を見ますから、誰がキーマンかこれでわかります」(高島氏)
その場にキーマンが出席していないときには、次の機会に出席してくれるよう促すという。
キーマンというより、中心になって動いてくれる部署を探さなくてはならないのが小暮氏だ。
TFTの事業は、日本など先進国の大人が「ちょっとヘルシーなメニューを選び、その代金のなかからアフリカの小学生の給食代を寄付する」(小暮氏)というものだ。プログラムを導入しているのは企業の社員食堂や外食産業、コンビニなど。導入企業を増やすための“営業”が小暮氏の大事な仕事である。
共感を得やすくてシステムがシンプルなため、一見すると賛同者を集めるのは簡単そうだが、現実にはいくつかの壁がある。たとえば、次のような問題だ。
「大きな会社だと、社会貢献を扱うのでCSR部が関係します。社員食堂を使わせてもらう場合は、総務部の担当。ヘルシーな食事で従業員の健康を増進するという意味では、福利厚生を司る人事部の了解も取らなくてはなりません。このうちどこが責任部署かがわからないと、なかなか話が通らないことがあるのです」
会社によっては、最初に接触した人が「うちでは人事がイエスといえば話は通ります」と耳打ちしてくれることもある。ただ、通常は「効果的な質問を当ててみて、対話のなかから推測するしかない」という。具体的には、次項で紹介するようなやり方である。