リクルートエージェントによると、2年前に比べ求人数は約50%減。その一方、一部の職種では売り手市場に沸いている。激戦の転職市場で、有利に働く学歴・職歴を明らかにする。
では、転職において有利な学歴とは何かについて考えてみたい。
中途市場の話をする前に、新卒採用において学歴差別・区別が顕著になっていることを前提としてお伝えしたい。
人事担当者向け情報サービスを展開するHRプロ株式会社が10年6月に発表した「HR戦略資料2010」によると、新卒採用において33%の企業が採用ターゲット校を設定していることが明らかになった。さらに、ターゲット校数は20校以内が82%、10校以内で58%という結果となった。日本には募集停止中も含め788校の大学が存在するが、採用ターゲットとなる学校がこれだけ絞られているという事実に愕然とする。
前置きが長くなってしまったが、転職における学歴は、一般的には新卒ほど影響しないといわれている。特に30代になるにつれて学歴よりも職歴がモノをいうようになる。
とはいえ、企業側にとって学歴は判断材料の一つとなる。社内に高学歴層が多い大企業では、そういった傾向が強い。
学歴の序列は旧帝大などが頂点となり、次に早慶、そしてMARCHという順番になることも新卒とあまり変わらない。
人材紹介会社関係者によると、「金融では現場(リテール・ホールセール)は中堅私大まで、本部(管理部門、トレーダー、投資部門、企画など)は上位校中心、大手メーカーも本体と子会社で学歴ランクは異なる。もっとも、入社した後は実力次第だが」とのことで、転職においても学歴による差があることは公然の秘密になっている。
その中でも最近、人気が高いのは理系学部出身者である。特に国公立理系学部の出身者は、旧帝大クラスでなくても注目を集めている。
職歴においても、同じ傾向がある。現在の回復基調を牽引しているのは、エンジニアなどの技術系職種への求人である。
化学業界では、電池系のエンジニアのニーズがここ数年で急速に高まっている。環境対応を進める自動車関連企業が、太陽電池、燃料電池などの技術を持つエンジニアの採用を積極的に行っているからだ。
また、電気・機械業界でもエンジニアが不足している。この分野では現在、海外進出が加速しており、原子力を中心とした発電プラントなど幅広い分野のプラント関連業界で採用が続いているという。
現在、求人が最も活発化している業界の一つがIT系企業だ。
最近、IT系企業の人事担当者に会うたびに、「優秀なエンジニアが採れない」という声をよく聞く。特にWEB系のエンジニアの経験者、優秀層は壮絶な争奪戦となっている。特にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やモバイル向けサービス企業で顕著である。WEBエンジニア、WEBプロデューサー/ディレクター/デザイナーなどの採用が盛り上がりを見せている。
iPadやiPhone向けのアプリ、携帯向けゲームの開発が盛んになっていることが採用を加速させている。背景には、ネット業界の収益構造の変化があげられる。広告収益だけではなく、ユーザー課金によって収益を上げる構造にシフトしていることがポイントである。特にアプリ開発の基礎技術となるLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP、Perl)に熟達したエンジニアへの需要が高い。
人材紹介会社関係者によると、ネット系企業の経験者だけでなく、SIerでWEBシステムの開発経験がある人、さらには独学での実務未経験者まで採用しているという。
※すべて雑誌掲載当時