「インフラ輸出」戦略の見直しも
鉄道インフラ輸出を巡っては、日本は政府主導により10月20日、東日本旅客鉄道(JR東日本)や三菱商事、日立など民間約50社が出資する輸出支援機関「海外交通・都市開発事業支援機構」を設立したばかりだ。また、JRグループで組織する国際高速鉄道協会も新幹線輸出に精力的に動き出すなど、官民挙げたオールジャパン体制で鉄道インフラ輸出に乗り出した矢先だけに、中国最強集団の誕生によって「日の丸・インフラ輸出」は出鼻をくじかれかねない。
直近でも、川崎重工など5企業連合が参加した米ボストンの地下鉄車両入札で、中国北車が10月23日、同じく応札したボンバルディアの半値とされる最低価格で競り勝ち、284両、総額5億6700万ドルの受注を勝ち取った。
しかし、中国勢の脅威は低価格にとどまらない。10月24日には中国が主導する形で、日本、米国が最大の出資国であるアジア開発銀行(ADB)の対抗軸として、インドや東南アジア諸国など20カ国が参加するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に道筋を付け、金融面での新興国向けインフラ輸出支援の体制を整える。政府の後ろ盾による中国南車、中国北車の合併は資金調達力の向上が見込まれ、日欧米勢に見劣りする研究開発力や国際競争力の強化につなげれば、先進国市場での事業展開も一段と加速できる。
重電、重機械などインフラ分野をめぐっては、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、シーメンスと三菱重工業を巻き込んで今夏、アルストムのエネルギー事業買収でつば競り合いを演じるなど大型事業再編の時代に突入しており、鉄道車両分野での中国巨大企業の誕生はさらなる世界のインフラ企業再編呼び水となる可能性もある。同時に、日本企業、さらに日の丸・インフラ輸出にも戦略練り直しを迫りかねない。