与野党の力の差は歴然、自信満々で決断した解散・総選挙に見えるが、実は安倍氏も「追い込まれて」いたという。(Getty Images=写真)

「安倍首相は自信満々。本気で“民主党をぶっ潰す”つもりです」――総選挙に臨む安倍晋三首相の心境を、その側近はそう語る。12月2日公示、14日投開票の総選挙について、首相は並々ならぬ自信を持っているようだ。

政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が話す。

「10月末頃に官邸が極秘の世論調査を行ったところ、自民党が320~330議席で圧勝、民主党半減という結果が。首相は“解散・総選挙をやるなら今しかない”と判断したのです」

首相が解散を決意したのは10月30日の衆院予算委員会での民主党、枝野幸男幹事長との“バトル”がきっかけとされる。

政治資金をめぐる閣僚の不祥事が相次ぎ、首相のイライラは爆発寸前に高まっていた。そこに枝野氏が朝日新聞掲載の首相発言を元に首相を追及したところ、首相は「朝日の報道は捏造」と逆襲。さらに枝野氏の政治資金の記載漏れや「革マル派」が浸透している団体から献金を受けていることを引き合いに出して枝野氏を逆に追及した。

「枝野氏とのバトルを境に、首相は戦闘モードに切り替わった。閣僚の不祥事を追及され続け、積もりに積もった鬱憤が爆発。そんなに言うなら解散して民主党を壊滅に追い込んでやると腹を括ったのです」(鈴木氏)

もっとも、首相は余裕綽々で決断したわけでもなさそうだ。それも当然だろう。確かにアベノミクスの第一の矢の金融緩和は、株高、円安、大企業の収益アップにつながったが、企業の賃上げには結びつかず、一般国民に恩恵が届いていないのだ。また今年4月の消費税増税で大きく落ち込んだ消費は、いまだに回復の兆しすらない。

「しかも、来年は、集団的自衛権行使に伴う自衛隊法改正など国民に不人気な法案審議を控えています。そこで、来年以降は自民党への風当たりが確実に強まるので“今のうちに”と解散した。実態は“追い込まれ解散”なのです」(同)

とはいえ野党の惨状は目を覆うばかり。前回総選挙で国民からノーを突きつけられ、57議席の弱小野党に転落した民主党は、復活の足掛かりすらつかめない。

維新の党、みんなの党などの野党も内ゲバや分裂を繰り返し、自滅寸前。だらしない野党のおかげで首相は安心して解散カードを切れたのだ。