保険料アップで手取り収入が減る

デフレ経済脱却を最優先の政策課題に据える安倍晋三政権下で、会社員などの手取り収入が目減りしかねない、デフレ脱却の方向と“真逆”な医療制度の見直しが進みつつある。

厚生労働省が来年1月開会の通常国会に提出を目指す法案に、財政難に陥っている国民健康保険(国保)の高齢者医療負担を、大企業の社員が加入する健康保険組合などによる肩代わり分を一段と重くする仕組みを盛り込もうとしているからだ。健保組合の負担増は保険料率上昇を招き、会社員の手取り収入減にもつながる。

異例の政治介入で民間企業に賃上げを迫り、「経済の好循環」の実現を目指す「アベノミクス」に相矛盾する点は否めず、「自民党一強」下での安部政権に擦り寄る経済界さえもさすがに反発を強めている。

厚労省が社会保障審議会(厚労相の諮問機関)に提案した見直し案は、健保組合に加え、公務員が加入する共済組合に対して、社員、職員ら組合員の月収に応じて国保の75歳以上の後期高齢者分の仕送り金を分担する「全面総報酬割」の導入が最大の特徴だ。

社員の月収が高い大企業の健保組合ほど負担は増し、労使折半の保険料は上昇しかねない。厚労省はその上、前期高齢者(65~74歳)の加入比率が低い健保組合ほど国保への仕送りを増やす新たな仕組みの導入も目指している。厚労省としては、健保組合と共済組合のほか、同じく高齢者支援金を負担している中小企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の負担額を今回の見直しで減らし、その分を国保の赤字の穴埋めに転用する腹づもりだ。